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エイチ・アイ・エス(HIS)が航空座席の確保へ本格的に動き出した。タイ・バンコクに国際航空チャーター会社を設立することを発表した。以前から澤田会長、平林社長はチャーター航空会社の設立を示唆しており、遂に機は熟したと見たようだ。 昨年のJATA旅博のシンポジウムにパネリストとして出席した平林社長は、海外旅行需要があるにもかかわらず、航空座席の供給がタイトであることを再三指摘していた。 とくに、成長著しいASEAN諸国−日本間の観光交流が拡大する中で、HISは航空座席の供給不足への対応策として、タイのチャーター会社と提携して、日本からタイへのアウトバウンド、タイから日本へのインバウンドの両需要に対応した。 この時も、安定供給に向けてHISは自社でチャーター航空会社を設立するのではとの見方も出ていた。さらには、タイの事例をビジネスモデルとして、両氏ともに、いずれはチャーター航空会社を使って、アジア全体のグローバルな旅行事業に乗り出すことをほのめかしていた。 澤田会長、平林社長は、HISを今後も成長軌道に乗せるためには、日本発の海外旅行事業中心からアジアを中心とした日本アウトバウンド、日本インバウンド、そして第3国間の旅行事業への進出という展開を強調していた。 そのために、ランドオペレーターとしてアジアに乗り出しているミキ・ツーリストを傘下に収めた。次の一手は、航空座席の供給確保に向けてチャーター航空会社の設立である。 旅行会社が航空会社、客船、観光施設、ホテルなどのハードウェアを保有・運営することにはハイリスクが伴う。しかし、HISはそれについては極めてチャレンジングだ。 かつてのスカイマークエアラインズの設立に始まり、ホテル、バス、クルーズ、テーマパークの運営も手掛け、総合旅行事業グループとして成長を続けている。 澤田会長に昨年話を聞いた時、「若いスタッフが真剣に航空会社を保有したいと思い始めている」と述べており、いよいよその機が熟したということだろう。 チャーターの新会社は来年の夏から秋を目途に日本−バンコク間に就航する計画。その後、国慶節時期にはバンコク−中国間、イスラム教の断食明けの祝祭期間となる11月にバンコク−中近東間に就航する予定。機材の稼働率を高めるために、各国の連休期間など高需要期に合わせて路線を運航する。 運航路線を見て分かる通り、これまでHISが使っていたタイのチャーター会社と同様に、新しいチャーター会社は、HISグループが大半の出資をするもののタイの航空会社として路線展開する。 日本からタイへの旅行需要はビジネス、レジャー含めて今年は130万人を超えると予想されている。一方で、タイからの訪日需要も増加の一途を辿り、今年は1-10月累計で前年同期比84%増の21万1000人。英独仏いまや6番目の訪日国となっている。 「昔のチャーターは片道が空席だったが、いまやアジアのマーケットが拡大し、双方向で満席にできるようになった」(澤田会長)。 ASEAN諸国の人口は約6億人。EUよりも巨大なマーケットだ。日本行きを含めてASEANからの海外旅行は拡大する。中国、インドを含めてアジアの旅行市場は近い将来、欧米を抜いて主役に躍り出る。 さて、HISのこうした動きに対して、JTBはどのような手を打ってくるか。航空座席の供給確保は旅行業界全体の問題。事業規模の大きいJTBも成長を続けるには、グローバル化が一段と加速しなくてはならない。JTBの次期経営戦略が待たれるところである。(石原)
by yoshiro.ishihara
| 2012-12-10 00:00
| 航空・旅行
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