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政府は「観光ビジョン実現プログラム2016」の実現に向けて、政官一体で取組むとしているが、今回の国土交通省の幹部級人事異動の発令は、まさに観光政策を最重点に進めていくことを強く印象づけた。 武藤浩国土交通審議官の事務次官昇格は、少し驚きだったが、観光庁発足1年目に観光庁次長としてこれを牽引し、観光政策の拡充強化に務めたほか、民間側の受け皿となるナショナルセンターをつくるべく、日本観光協会とツーリズム産業団体連合会(TIJ)の統合を後押しし、日本観光振興協会の立ち上げを行政側から強くサポートしたことは高く評価されている。 ドメスティックな色彩の濃かった旧日本観光協会を変えるために、日本観光振興協会の会長を経済界から迎え、国際的な組織に移行する道筋を付けた。 また、国土交通審議官には田端浩大臣官房長が就任する。観光部旅行振興課長、観光庁観光地域振興部長などを歴任し、海外・国内・訪日旅行に精通した田端氏が国土交通審議官に就任することは、インバウンドのみならず、アウトバウンドにとっても期待は大きい。 さらに、田村明比古観光庁長官は留任し、武藤−田村−田端3氏か観光ビジョン実現への「観光三役」とも言え、政府、国土交通省の観光に対する「本気度」を見る思いがする。観光庁審議官に就任する瓦林康人大臣官房会計課長も、観光庁で国際交流推進課長を務めており、田村長官を支える。 観光行政は今後、民泊サービス、通訳案内士、ランドオペレーター登録制度などの法整備が目白押しで、これまでの需要拡大政策を進めながら、制度改正に向けた法整備に本格的に取組むこととなる。 今回の幹部人事では、道路局長に石川雄一関東地方整備局長が昇格する。石川氏は旧建設省出身のエース級と目される。旧建設省と旧運輸省の交流人事で、当時の観光地域振興室長に就任し、観光政策を熟知しており、訪日外客拡大、地方分散化に向けて、道路行政の取り組みも期待される。 ところで、観光庁関連の民間団体の幹部も今年は異動する。前述の日本観光振興協会の理事長には、久保成人前観光庁長官が就任した。 また、日本旅行業協会(JATA)の理事長も今年は異動し、新関西国際空港会社常務だった志村格氏が就任する。志村氏は大臣官房参事官(観光)、観光部旅行振興課長、航空局交際航空課長、大臣官房審議官(国際)、観光地域振興部長、観光庁審議官、観光庁次長と観光・航空・国際畑を長く歩いた。 とくに、志村氏は英語、中国語、フランス語など7カ国語に堪能で、観光庁時代は米国IPW(旧パウワウ)にも観光庁を代表して出席し、米国観光関係者と合同会議で議論するなど、アウトバウンドにも精通しており、海外旅行主体のJATA理事長は最適任と言える。 2001年、本田勝元事務次官が観光部企画課長時代に、今の観光立国への道が開かれたと思うが、その当時に観光部に参集した人々が、現在の観光行政の中心を形成している。 これまでは、訪日プロモーション施策をはじめとして、ある程度「イケイケ」で来た。訪日ビザ緩和などが功を奏して2000万人を達成した。 「観光ビジョン実現プログラム2016」が目標とする訪日外国人旅行者2020年4000万人、2030年6000万人に向けて、これからが正念場となる。 既に顕在化しているが、需要に供給が追いつかない。民泊サービス、通訳案内士、ランドオペレーター制度などの法整備を早く進めてほしい。とくに、東京オリンピック・パラリンピック開催の2020年までにどこまで体制を整えるかが問われる。 今回の国土交通省・観光庁の新体制が、観光政策の次の道筋を決めることになるのでないか。観光ビジョン実現へ「豪腕」に期待したい。(石原)
by yoshiro.ishihara
| 2016-06-20 00:00
| 航空・旅行
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