鳥インフルエンザがアジア全域に拡大しつつある。外務省は1月27日、鳥インフルエンザについて注意を呼びかけるスポット情報を発出、ベトナム6名、タイ1名の計7名の死亡確認と韓国、日本(山口県)、インドネシア、カンボジアの発生状況を説明しているが、WHO(世界保健機関)は27日にさらに1名の死亡を確認、鳥インフルエンザ感染による死亡者はアジアで8名に増えた。
また、中国広西チワン族自治区で起きたアヒル大量死を中国衛生省が同日、鳥インフルエンザの感染と確認、これを受けて日本政府は中国の鶏肉輸入停止を決めた。
既に、鳥インフルエンザは日本を含むアジアの10カ国・地域に拡大しており、今後さらに広がれば、経済はもとより、海外・国内・訪日すべての旅行需要に影響を及ぼすことが懸念される。
とくに、WHOは鳥インフルエンザについて、これまでは人から人へは感染した事例はないと報告していたが、27日の国際食糧農業機関(FAO)、国際獣疫事務局(OIE)の3機関による共同声明で、鳥インフルエンザが人から人へ感染するウイルスに進化する危険性があると警告、発生各国に管理対策の必要性を訴えた。
万が一、人から人への感染が現実のものとなれば、昨年の重症急性呼吸器症候群(SARS)と同様に、旅行重要に重大な影響を及ぼすことは避けられない。
思えば、SARSの時も感染発覚当初は、その後に大きな影響を受けるとはほとんどの人が思っていなかった。心配しすぎかもしれないが、杞憂に終わればそれに越したことはないわけで、旅行業界も常に顧客に対応できるだけの正確な情報収集を怠ってはならない。
とくに、SARSの時もそうだが、感染症に関してはシニア層への影響が最も大きい。中国をはじめSARS感染拡大で、シニア層の旅行延期が相次ぎ、回復傾向にあるとはいえ、今もシニア層の需要の戻りが遅れている。中国ではリカバリー対策として、シニア層の需要回復を重点項目の一つに掲げている。
また、海外旅行需要とともに、鳥インフルエンザで心配されるのは、日本も発生国の一つに数えられていることだ。SARSの時は疑い例は出ても、結局感染国にはならなかった。それでも、一時期は同じアジアということで、訪日旅行者が減少した。今回は世界中に発生国として伝わっており、訪日旅行者にも影響が出ないかと懸念される。
さらに、国内旅行需要への影響も心配される。日本人の国民気質から言っても、鳥インフルエンザが発生した地域への旅行は手控えることは十分予想される。感染が拡大すれば、旅行需要が一挙に冷え込む恐れもある。
狂牛病による牛肉に続いて、鳥インフルエンザは鶏肉・鶏卵などの消費に影響が既に出て、生産者、小売りなど経済問題が深刻になりつつあるが、旅行・航空業界も当事者問題として捉えるべきだろう。
旅行業界としても、SARSの事例を踏まえて、鳥インフルエンザに対して最新の情報を収集するとともに、危機管理に万全な対策を講じる必要がある。(石原)