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2008年 06月 30日
トム・クランシーの人気小説に、「いま、そこにある危機」というのがある。ハリソン・フォード主演で「今そこにある危機」として映画化されたので、ご存じの方も多いと思う。以前から、不思議な邦題と思っていたのだが、原題は「Clear and Present Danger」。これを「今そこにある危機」と訳した人は大したものである。これを邦題の最高傑作と評する人もいるらしい。
翻訳小説としてベストセラーになったり、映画化されたことで、近年、直面する問題を「今そこにある危機」と表現することも多い。例えば、地球環境問題は、世界中が直面している「今そこにある危機」という具合に使われる。翻訳ソフトの中には、「Clear and Present Danger」と入力すると、「今そこにある危機」と日本語に変換されるものもある。 それでは、旅行業界が直面する「今そこにある危機」とは何なのか。思いつくままに上げれば、まずは燃油サーチャージ、若年層の海外旅行離れ、国際航空券販売に対するコミッションカット、レジャー路線の供給量減少、中国旅行需要の激減など沢山出てくるが、最大の課題は「海外旅行に魅力がないと誤解されていること」と思っている。 JATAの新町光示前会長が退任の時に、JATAすなわち旅行業界が取り組むべき課題の一つとして、「若年層の海外旅行離れ」を指摘していた。まさしく、これは大きな問題で、官主導の青少年交流の拡大は必要とは思うが、そうしたことだけでは解決しないのではないかと感じている。 海外旅行が低迷している要因はいろいろあるが、若年層に限らず、根本的に「海外旅行に行かなくても」という意識が底流に流れている気がする。もちろん、誰しも「海外旅行に行きたい」とは思うのだが、無理して行かなくても、大型テレビやインターネットで疑似体験できる。 さらに、最近は「海外旅行は割に合わない」。物を購買する時には、まずは「費用対効果」を考える。高価格商品は高品質を求めるので分かりやすいが、ある程度リーズナブルな価格で旅行商品を求めていた最もボリュームのある層には、現状の燃油サーチャージを考えると、海外旅行は割高になる。「今はその時ではない」。 さらに、海外旅行に不安はつきまとう。テロ、SARS以降の外的なマイナス要因は毎年のように発生しており、安心・安全面からも、無理して「海外旅行に行く必要性はない」。 こうした要因が重なり合って、海外旅行の魅力自体がトーンダウンしているのではないか。とすれば、このままでは、いつになっても海外旅行需要は回復していかない。 以上は、海外旅行全体の「今そこにある危機」。 次に、海外旅行業界の「今そこにある危機」は、1990年代に海外旅行の「潮流」から「本流」へと流れる「個人旅行化への対応」であると考える。今さら「個人旅行化」もないだろうと思う人もいるだろうが、今や、パッケージも手配も旅行の主役は「個人旅行」である。そして、航空会社のインターネット・オンラインによる直販はこれからが本番である。一方で、海外サプライヤーは日本の旅行業界に対して、対応の見直しを進める懸念も広がりつつある。 2010年からの羽田の国際化について、国土交通省は、アジア近距離路線とビジネス路線を運航すると明言している。LCCの羽田乗り入れを含めて、羽田国際線は、日系航空企業が言うところの「個札」の世界が進行することが危惧される。 羽田国際化による事業規模の拡大は、航空会社にはビジネスチャンスだが、旅行会社へのメリットは不透明だ。大手旅行会社はボリュームがあるだけに、地方から羽田経由商品などで航空会社と提携・協力関係を築けるだろうが、大手以外の中小旅行会社は供給面で厳しい状況にさらされるかもしれない。 さて、海外旅行の「今そこにある危機」は、旅行会社だけの問題ではない。我々のような海外旅行メディアも同様に危機意識を持っている。そこで、同じ問題意識を共有するメディアが集まって、海外旅行を考える共同キャンペーンを計画している。ベクトルはJATAと同じ、海外旅行需要の拡大と旅行業界の地位向上である。メディアが集まって何ができるのか。現状の問題意識の共有と共通理解、そして統一行動が運動を大きくすると考える。(石原) by yoshiro.ishihara | 2008-06-30 00:00 | 航空・旅行
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