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海外旅行商品、パッケージツアーの代名詞と言えば、いうまでもなくホールセール商品だった。その存在価値は今も高いが、それでも1990年代と比べると市場におけるシェアは縮小方向にあるのではないか。 旅行業界では、これまで上期・下期のホールセール商品の発表会見は、1年で最も華やかな年間行事だった。とくに、大手各社の商品戦略と販売目標・実績数値は業界の関心が高く、マーケットの方向性を示すものだった。 しかし、今年下期は近畿日本ツーリスト以外のホールセーラー各社は商品発表の会見を中止した。その理由はともかくとして、各社トップがマーケットをどう見て、どのように商品造成したのか、実際に直接知る機会だっただけに、こうしたことをプレスリリースだけで済ませるのは非常に残念に思う。 以前のホールセール商品は、大手旅行会社が商品造成で紛れもなく競い合っていた。弊紙もそうだが、旅行業界紙にはホールセール商品の広告と記事が横並びで掲載されていた。阪急交通社がホールセール事業からメデイア販売に特化し、東急観光(現トップツアー)、中堅旅行会社もホールセール事業から撤退し、今や、ホールセール事業の維持・運営は、相当の事業規模がなければ難しいところまで来ている。 ホールセール事業の縮小傾向と逆に、市場で存在感を示しているのがエイチ・アイ・エス(HIS)に代表されるパッケージ直販、阪急トラピックス、クラブツーリズムなどの会員制、メディア系直販の旅行会社だ。 海外現地に取材に行くと、強く感じることだが、日本の海外旅行市場を代表するブランドの中で、HIS、トラピックスなどの重要度が増している。現地では、ホールセール商品とともに、HIS、トラピックスなどの商品化を望む声が強い。これは、直販系の旅行会社は、商品造成が臨機応変な面があるからかもしれない。 ホールセーラーと直販系の旅行会社を競争面で同列に扱うのはどうかと思うが、現実に海外旅行市場で、競争し合っているのはルックJTBとHISという印象が強い。 こうした厳しい競争といえば、価格競争ということになる。市場が冷えこんでいる中で価格競争は、旅行業界に限らず、どこの業界でも厳しいが、収益性を落としてまで競争すれば、どこかにツケが回る。価格競争の一方で、商品開発、市場開発で競い合ってほしいと思う。 それにしても、ルックJTBはホールセール事業で、提携販売店へのコミッションを考えると、直販会社と同じ土俵で戦うことは、JTBの底力と言わざるを得ない。ただ、HISのように臨機応変にマーケットの変動に合わせて、常に商品価格を設定することが課題になる。 90年代後半に個人手配旅行(FIT)が伸びてきた時に、相対的にパッケージツアーのシェアが落ち、パッケージツアーの将来性が懸念された。しかし、最近は、FITとフリープランのパッケージが停滞し、パッケージツアーが再び伸びてきたというデータもある。 しかし、ユーザーは業界が考えるほどFITとパッケージの違いをフリープランを含めて意識しておらず、HISがパッケージにシフトしている事実がパッケージの変容を物語る。 HISは海外旅行取扱人数の伸びだけでなく、パッケージの比率が高まっている。HISの代名詞だった「格安航空券大手」は今はもうない。 海外旅行者数が減少している中で、ホールセール事業が縮小化するのはやむを得ない部分もある。そうした厳しい状況の時にこそ、ルックJTBはマーケットリーダーとして、旅行業界の方向性を示してほしいと期待する。(石原)
by yoshiro.ishihara
| 2009-07-27 00:00
| 航空・旅行
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