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てるみくらぶの破産手続きが開始された。現段階で負債総額は約151億円、債務者数は約3万6000名。旅行中の旅行者も2000名以上いた。消費者被害は約100億円、弁済限度額は1億2000万円で、弁済金は1%台。取引先債務は約96社・約18億円、金融債務は約32億円と試算されている。 負債総額は旅行会社としては過去4番目。最大の負債総額は、1998年に破産した格安ホールセラーのジェットツアーの約252億円だが、一般債務者の人数と被害額、さらに返金が1%程度となると、一般消費者被害では過去最大になるかもしれない。 1990年代後半に旅行会社の倒産が相次いだ時代を受けて、日本旅行業協会(JATA)では、消費者保護を拡充するため、旅行会社が弁済制度とは別に任意で保証金を積む「JATAボンド保証制度」を設けた。その後は、弁済還付率が1ケタ台に留まる事例は稀で、旅行業界は自助努力で、今日まで消費者への信頼を積み上げてきた。 てるみくらぶはJATAボンド保証制度にも加入しておらず、旅行業界にとっても負債総額の多さ、消費者被害の大きさは衝撃的で、旅行業界全体の信頼を損なわせた。 かつて「格安御三家」と謳われた四季の旅社も1998年に倒産。負債総額は20億円、被害者が1万6000人と言われた。旅行中の旅行者も1000人以上いた。その時の会見で当時の藤田昭社長は「生き残ろうとする努力が逆に、たくさんの旅行客に被害を与えてしまい、修復のつかない現実を引き起こした」と詫びた。 あれから20年、てるみくらぶの山田千賀子社長も会見で「最後の最後まで支払いは目処が立つと思っていた。とにかく何とか守らねばと引っ張ったのが、こういう迷惑をかけることになってしまった」と同様のことを語った。結果的には、旅行者、取引業者を守ることよりも、会社を守ることを優先した。旅行業界が約20年掛けて培った消費者の信頼が、一瞬にして崩れ去るような思いに駆られた。 「格安」を売りにした旅行会社の多くは倒産した。航空会社の余剰座席をIT運賃で買い取ってバラ売りするビジネスモデルは、航空会社の直販、PEX運賃の登場、航空会社の機材ダウンサイジング、イールド志向で終わっている。 さらに、FIT化の進行、海外OTAの日本市場拡大で、中小だけでなく大手旅行会社でさえも、格安パッケージツアーで対抗することは難しい状況だ。 てるみくらぶは、その時代の流れも分かっていて、シニアやウェディング市場へのシフトを急いだ。しかし、これらの市場参入は大きな投資が伴う。新聞広告、テレビのスポンサードなど、大手旅行会社の市場を中小が参入すれば、当然、資金繰りは苦しくなる。 同社の経営状況を見ると、最後は新聞広告で現金を集め、それを航空券や取引業者の支払いに当てたが、取引業者の支払いは何ヶ月も未払いになって滞り、3月23日のIATA BSP決済のデフォルトで万策尽きたというところか。 消費者もさることながら、ランドオペレーターをはじめとして、取引業者にも大きな損害を与えた。消費者への被害を最小限に留めるためにも、業界全体で日本の商慣習を改め、前払い制度の徹底を図る時期に来ている。 てるみくらぶの問題はこれからも続く。破産手続開始申立書によると、2016年9月期決算書を2種類作成し、赤字決算を黒字決算に改ざんした可能性がある。債務超過額も16年9月期時点で75億円に修正し、17年3月23日時点で126億円に膨らんだことも分かった。 仮に、16年9月期決算が粉飾決算であれば、被害者による原告団を組織しての刑事裁判になることも予想され、そうなるとこの問題は長期化する。 山田社長が経営する旅行会社の経営破綻は、今回が2度目と聞く。数多くの一般旅行者を路頭に迷わせ、旅行者・旅行申込者に大きな精神的、経済的損害を与え、取引事業者にも多大な影響を与え、旅行業界の信用を失墜させた責任は重い。(石原)
by yoshiro.ishihara
| 2017-04-03 00:00
| 航空・旅行
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