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JTBは2018年4月に事業持ち株会社のJTBとグループ15社を再統合し、JTBとして新たにスタートする。JTBは佐々木社長時代の2006年4月に事業会社、地域会社などに分社化した。当時の思い切った分社化は旅行業界だけでなく、社会的にも話題になった。 分社化を決めた当時、佐々木社長に分社化の正否をいつ頃見極めるか聞いたところ、10年は必要と答えていたことを思い出す。 佐々木氏は、「JTB一体で経営する時代から、個々のグループ企業がマーケットに『正対』し、それぞれがマーケットのオンリーワン企業になることで、グループ全体の力が強まる」とし、分社化により多様化するマーケットで厳しい競争を勝ち抜くことを強調した。 とくに、佐々木氏は「旅行会社を成長させた旅行ブームは10年前に終了、その後は旅行が多様化し、自由度の高い個人旅行、サプライヤーによる直販化が進行している。とくに、インターネットによる変化は今後も加速度的に推移する」と旅行業を取り巻く環境を冷静に分析していた。 あれから11年、高橋社長は分社化を総括して、結果的に「再統合」の答えを出した。分社化後の11年間は、FIT化の進行、サプライヤーの直販化、海外OTAの急成長などで、旅行事業環境はJTBが予想する通り大きく変化した。 また、訪日旅行が急成長を遂げ、旅行業界も取扱額を伸ばしているが、旅行形態が団体ツアーから、インターネットによるFIT化にシフトすることに伴い、業績は頭打ちになりりつつあり、主力業務とはなり得ていない。 JTBではこれまでの分社化の取り組みと再統合への理由にについて、DMCなど地域交流ビジネス、MICE事業、グローバル事業の拡大など交流文化事業の推進で一定の成果を得たが、競争環境が大きく変化し、従来型ビジネスモデルでは課題解決につなげることが難しくなったとし、「個人」「法人」を軸とした事業単位の経営体制に移行する。 「法人」いわば団体旅行は、旅行会社の専売特許であり、最も得意とする分野だけに、これを一つの軸とすることは分かる。問題は環境が激変する「個人」をどうするかだ。統合する15社にはJTBワールドバケーションズ、JTB国内旅行企画、i.JTBが含まれる。高橋社長が常々語る「変革」に向けて、「仕入れを制するものが営業を制する」なら、海外のJTBワールドバケーションズ、国内のJTB国内旅行企画の企画造成・仕入力、OTAとしてのi.JTBの成長が統合により、OTAに対抗できるビジネスモデルになり得るかが個人旅行の鍵を握ると思われる。その中で、大都市や地方の店舗は人員を含めて、どのような方向に進むのかも注目される。 とくに、一方で、個人旅行でシニア向けなどの高品質・高価格帯の市場を拡大することができるかも課題となる。JTB首都圏のJTBロイヤルロード銀座などはあるが、高品質の旅行市場を制覇することができるか、人員投入を含めて、その点も注目される。 事業持株会社JTBを、持株会社JTBホールディングスとしてグループ会社を統括し、ビジネス領域を拡大する道もあったと思うが、敢えて、それを選ばずに再統合に舵を切った。高橋社長は、変革するにはJTBだけでは戦えないと語った。積極的に資本提携・業務提携、M&Aなどを仕掛けるには多額の投資が必要で、そのために再統合によりJTBが大きく、強くなることが必要と判断したことを示唆した。 分社化がDMCをはじめ地域活性化、地域創生に成果を出したとはいえ、再統合することは分社化からの方向転換を意味する。再統合に向けて、個人、法人事業もさることながら、グローバル事業、訪日インバウンド事業の具体化はこれからだ。2018年度から再統合の数値目標、2020年ビジョンに変わる中期経営計画なども、今後の作業に委ねられる。いずれにしても、JTBの再統合に業界全体が大きな影響を受けることは間違いない。(石原)
by yoshiro.ishihara
| 2017-04-10 00:00
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