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わが国を代表する3つの大手旅行会社であるJTB、HIS、KNT-CTホールディングスが事業再編に踏み切る。大学新卒者の就職人気ランキングで上位を占める3社が大幅な事業再編を行うことは、旅行業界が大きな岐路に立っていることを象徴している。 HISは昨年、沢田会長が社長に復帰し、脱旅行業、OTA化などを掲げて先陣を切った。その後の現在までを見ると、ホテル事業や電力事業は進んでいるとみられるが、旅行業に大きな動きはない。今のところは、沢田氏が社長を兼務することにより求心力を高めることが最も大きいように思う。 JTBは年度替わりの4月に分社から再統合へ、再び180度の転換を発表した。事業持株会社のJTBとグループ15社を再統合し、JTBとして来年4月から新たなスタートを切る。再統合によりスケールメリットを活かすとともに、分社化により増大したコストを抑制する。統合によりJTBの求心力を高めるとともに、贅肉を削いだJTBとして旅行業界をリードしていく。 そして、4月末にKNT-CTホールディングスが事業再編を発表した。その内容は、KNT-CTが近畿日本ツーリストと近畿日本ツーリストの経営戦略部門を吸収し、KNT-CTグループの経営戦略部門として、文字通りのホールディングス機能を担い、その上で、近畿日本ツーリストと近畿日本ツーリスト個人旅行という近ツーの看板企業2社を解体する。 既にある「近畿日本ツーリスト北海道」「東北」「中国四国」「九州」の4社に加えて、の大都市部に「近畿日本ツーリスト首都圏」「関東」「関西」「中部」の4社を設立し、近畿日本ツーリストを地域毎に完全に分社化する。 また、法人・MICEは「近畿日本ツーリストECC」、訪日旅行事業は「近畿日本ツーリスト訪日旅行」、インターネット販売会社は「近畿日本ツーリストWEB」を事業専門会社として設立する。新会社名はすべて仮称。 JTBが組織統合で、HISが人で、それぞれ求心力を高めようとしている一方で、KNTグループは敢えてそれに相反するように分社化する狙いは何なのか。再編の基本戦略としてKNT-CTは、グループ横断的な事業戦略の策定機能の強化、地域密着による意思決定の迅速化と機動力の発揮、訪日旅行事業、インターネット販売事業など成長マーケットへの専門特化を挙げた。 JTBは事業持株会社としてグループの事業戦略機能を担ったが、ホールディングスとしての役割よりも統合の方が統括機能、意思決定、機動力などは高いと判断した。 HISは社内カンパニー制を導入して、意思決定の迅速化を図るが、経営トップの澤田氏の「号令一下」で動く社風であり、どこまで社内カンパニー制で意思決定・決済が迅速化するのかは未知数だ。 KNT-CTホールディングスがグループの事業戦略の策定機能を担うとなると、トップの経営指導力が問われる。新社長に内定した丸山氏の経営手腕が注目される。 今回の事業再編では、クラブツーリズムはそのまま存続する。訪日旅行事業は訪日専門の新会社に移行するものの、今後も独自の道を歩むのだろうか。一方で、近畿日本ツーリストと近畿日本ツーリスト個人旅行は解体し、地域会社、事業会社、専門会社に分かれていく。KNT-CTとして、この2つの流れがどうなっていくのか気になるところだ。 また、FIT化する訪日旅行事業、OTA台頭で最も競争が激しいインターネット旅行事業に対して、遅れてきた分社化で勝算はあるのか。最大の強みである団体部門の近畿日本ツーリストを解体して事業会社にすることの意味はあるのか。それらに対して答えを出さなくてはならない。 NNT-CTはJTBと真逆の道を歩む。ホールディングスを強化することで、グループ全体の統率と分社化した子会社の経営を成功に導くことができるのか、経営陣の指導力が問われる。(石原)
by yoshiro.ishihara
| 2017-05-08 00:00
| 航空・旅行
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