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観光関連団体の新春交流会で観光のトップ、国会議員の挨拶を聞いていて、旅行業界が非常に難しい立場に置かれていることを実感した。訪日インバウンドの中心となる輸送業、宿泊業、観光施設などの装置産業が今回の国際観光旅客税(仮称)に対して、行政や国会議員に謝意を示す一方で、アウトバウンド中心の旅行業界は新税の負担がマイナス要因となるだけに、新税に対する温度差は極めて大きい。 政治家から「双方向交流」「ツーウェイツーリズム」推進の言葉は出てくるようになったが、「アウトバウンド促進」を語る人は極めて少なく、そうした政治家を業界として、もっと高みに押し上げていくべきだと思う。 米国のインバウンド観光関連業界と政治家の関係を見ると、日本との違いが歴然としている。トランプ政権が誕生して、トランプ大統領がESTA(電子渡航認証システム)の手数料収入の訪米プロモーション割当を見直す動きがあった時、旅行業界は一丸となって反対した。 ちょうど昨年の米国トラベルトレードショー「IPWワシントン」がその時期で、2017年のIPWは、訪米プロモーションが、米国経済にどれだけ貢献しているかをアピールする大会になった。 その時の基調講演はウィルバー・ロス米商務省長官で、トランプ政権の中枢にある人が、基調講演で、訪米プロモーションの成果と米国経済への貢献を強調した。IPWがワシントンで開催されたこともあり、ブランドUSA、USトラベルアソシエーションは、活発なロビー活動を展開したと聞いた。 これを日本に置き換えてみると、例えば、国際旅客観光税により空港・観光インフラの高度化を進めるが、2020年の訪日旅行者4000万人の目処は立ったので、プロモーション施策を見直して、重要なセキュリティ対策を拡充する方向に切り替えるとしたら、観光関係団体は反対するだろうか。 日本でよく使われる「オールジャパン」。観光をオールジャパンで展開すると言われれば、現状では、何も反対できない空気感が漂う。現状はいいかもしれないが、米国のような事態が起きた時、観光団体は一丸となって反対表明するとは思えない。 インバウンドがこうした状況なら、アウトバウンドは尚更かもしれない。観光関連団体が圧倒的なインバウンド促進の中で、アウトバウンドを主体とするのは日本旅行業協会(JATA)、海外ツアーオペレーター協会(OTOA)など数団体だ。 国際観光旅客税の日本人負担に対する受益で、アウトバウンド促進策が講じられたとしても、それによって、利用者目線で日本人、事業者目線で旅行業界が恩恵に預かることは極めて難しいと考える。とくに、事業者は「安心・安全」「人材」とう普遍的な施策とは別に、数字の出る具体的なアウトバウンド促進策を裨益として求めるべきである。 アウトバウンド促進策を具体化するとともに、そのための予算を計上させる。それを求めるのは、アウトバウンド事業団体ではないか。例えば、若者の海外旅行促進は、検討会で促進策が決定したら、そのための予算を毎年度計上し、その施策を実行することが受益となる。 決して抽象的なものに終わらせず、予算化して施策を実行することで、アウトバウンド促進につなげる。 訪日インバウンドが拡大し、インバウンド観光産業が基幹産業へと成長していく中で、アウトバウンド中心の旅行業界の地位は相対的に下がっている。航空業界はインバウンドを引き込むことで経営環境を改善しているが、輸送業などの装置産業と違い、旅行業はインバウンドに苦戦している。日本人のためにアウトバウンドを活性化させる。これが国益でなくして何なのか。もっと声を上げるべきだ。(石原)
by yoshiro.ishihara
| 2018-02-05 00:00
| 航空・旅行
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