【潮流 - 雲上快晴 】
2018-03-12T13:51:38+09:00
yoshiro.ishihara
ウイングトラベル編集長 石原義郎の連載コラム
Excite Blog
アウトバウンド促進の課題
http://jwing.exblog.jp/28187174/
2018-03-12T00:01:00+09:00
2018-03-12T13:50:43+09:00
2018-03-12T13:50:43+09:00
yoshiro.ishihara
未分類
2016年はOTAの台頭で、日本人の海外旅行者数が伸びているのに、旅行会社の取扱額が低迷していることが問題視されていたが、2017年は主要50社を見るかぎり、海外旅行の収益は改善されたといえる。
好景気と言われる日本の実体経済と同じで、多くの旅行会社はそうした実感はないかもしれないが、収益性の高いヨーロッパの旅行需要の回復が寄与していることが大きな要因と思う、大手各社の決算状況を見ると、2016年度に不振だった海外旅行事業が、2017年はプラスに転じている。
アウトバウンド促進協協議会の設立目的の一つは、海外旅行者数が増えているのに、旅行会社の取扱額が増えない状況から抜け出し、現地観光局、サプライヤーと旅行会社、ツアーオペレーターなどが協力して、旅行会社が新たな商品を企画・造成し、現地に日本人を送客し、早期に2000万人を達成することにあると解釈している。
昨年発足した同協議会は、6つの地域部会に分かれて活動を展開。その中では、「ヨーロッパの美しい街道・道20選」を決定するなど、欧州部会の活動が目を引いた。同協議会スタート前のチーム・ヨーロッパが「ヨーロッパの美しい村30選」を選定、商品造成に結びつけた成功事例があり、「美しい街道・道20選」は同協議会の活動して、そのレールに乗っている。
JATAが2016年以降、パリ市などとともにフランス旅行需要の回復に尽力したことを見ても、JATAとアウトバウンド促進協議会の活動が連携して機能している。
また、東アジア部会は世界遺産のない台湾で、「世界遺産級台湾30選」を選定し、新たな展開を見せた。こうした動きは、欧州部会の活動の波及効果と見ることもできる。
アウトバウンド促進協議会の1年間の活動を見て、今後の課題の一つは、現地観光局、サプライヤーの「公平感」「バランス」を保つことではないかと思っている。どうしても欧州部会の活動が突出しており、他の部会が同等の活動をするのはなかなか大変かもしれない。
だが、そうしないと、現地観光局サイドに「不公平感」が生まれ、バランスを欠くことになる。この辺りは非常に難しい部分ではあるが、活動事例を共有化して、ぜひ公平に進めたいところだ。
旅行会社も各国・地域観光局も、お互いに競争関係ある。アウトバウンド促進協議会の設立目的に「海外旅行業界内で相互利益なる情報を積極的に共有し」とあるが、競争している中で「相互利益」を見出すことが課題だろう。
一国・一地域と旅行会社なら、利害が一致して、デスティネーションキャンペーンが展開できるが、複数の地域と旅行会社が競争関係を超えて、相互利益を見出して活動するわけで、非常に難しいが、これを乗り越えて、具体的な活動を展開したい。
これはアウトバウンド促進協議会を超えてJATAの役割だと思うが、ミクロネシアの旅行需要回復に対して、旅行業界全体でより一層の協力をすべきではないか。
かつて、日本の海外旅行を支えたマリアナは日本人旅行者が年々減少し、定期便運休の現実にさらされている。グアムは北朝鮮ミサイル問題から旅行者数が減少している。ミクロネシアの旅行需要回復に全面協力する姿勢を示すこと、そして需要回復に向けて、現地観光局やサプライヤーと議論を重ねて、ミクロネシア旅行商品の企画・造成を具体化していくことが必要と考える。(石原)
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2018年は「グアム回復の年」
http://jwing.exblog.jp/28187178/
2018-03-12T00:00:00+09:00
2018-03-12T13:51:38+09:00
2018-03-12T13:51:38+09:00
yoshiro.ishihara
航空・旅行
グアム準州のレイモンド・S・テノリオ副知事とグアム政府観光局のジョン・ネイサン・デナイト局長は、北朝鮮ミサイル問題を受けて、昨年8月下旬に「グアムに関する正確な情報を日本の皆様に伝えるため」に来日し、グアムの治安について警戒レベルを一度も引き上げておらず、住民も観光客も通常通りの行動を行っている点を強調した。
また、12月には日本−グアム間就航50周年を記念した「グアム・メガ・ファムツアー」を開催、全国から旅行会社、メディア、インスタグラマーなど400名近くが参加し、日本人需要の回復を図る方針を示した。
北朝鮮のミサイル問題という外的要因によって、日本人旅行者数が大きく減少したことは極めて残念だが、その後のGVBのリカバリー策は評価できる。安全・安心というセンシティブな問題に対して、官民挙げて冷静に対応した。
GVBでは、2018年のグアムへの日本人旅行者数を45万人から50万人と見込んでいる。2018年の供給席数が、前年の87万2000席から約61万席と約26万席ほど減少すると2月段階で予想している。チャーター便が予定通り運航すれば、1万席の供給増が見込まれるととしている。
政治問題で急激に需要が減少したことによる航空会社の減便が影響しているが、それでも明るい材料としては、日本航空が3月25日からの夏期スケジュールで、成田−グアム線を1日2便に増便することで、2018年は反転攻勢に打って出たいところだ。
JAL関係者によれば、グアムは回復してきており、1日2便の需要は十分にあると需給予測を立てている。GVBでは、2018年はスタート当初から毎日チャーター便が運航し、JALの成田線増便もあり、金子宗司日本代表代理は、「長期的には新規就航、短期的にはチャーター便活用」で2018年を乗り切る方針を示した。
金子日本代表代理は、「2018年は回復の年」と語る。確かに、これに尽きる。GVBなど地元関係者、増便するJALだけでなく、日本の旅行業界が全面的に協力して、グアムの日本人旅行需要を元に戻さなければならない。
旅行業界として、B2Bで何ができるのかをもっと突き詰めていきたい。4月以降にGVBと旅行会社による東京、大阪、名古屋での店舗キャンペーン、地方市場でのプロモーションの展開が計画されているが、もっとグアムのリカバリー策について議論すべきだ。
JATAアウトバウンド促進協議会(JOTC)で、グアムは北中南米部会。そのワーキングは、ラテン・アメリカ、ハワイ、日本・アメリカ旅行促進部会(ディスカバー・アメリカ・プロジェクト)の3つに分かれる。グアムは日本・アメリカ旅行促進部会に入るが、ここはアメリカ本土市場が中心になっている。
アウトバウンド促進協で、グアムのリカバリー策についてもっと議論が必要だ。とくに、今年のテーマの一つが若者のアウトバウンド促進にあるなら、北朝鮮ミサイル問題で大きな影響を受けたグアムの教育旅行の立て直しは、大きなテーマになる。また、グアムが力を入れるMICE需要に対しても旅行業界が取り組むべき課題だ。
2000年には100万人を超えたグアムへの日本人旅行者は漸減傾向にある。政治問題の影響を受けたとは言え、今年は50万人と最盛期の半分になろうとしている。旅行業界として、グアム観光需要の回復に全面的に協力することが、今年のテーマ「アウトバウンド躍進」に資することになる。(石原)
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旅行会社の若者離れとパスポート
http://jwing.exblog.jp/28187172/
2018-03-05T00:00:00+09:00
2018-03-12T13:50:02+09:00
2018-03-12T13:50:02+09:00
yoshiro.ishihara
航空・旅行
JTBワールドバケーションズの縄手伸弘執行役員マーケット戦略部長は、若者の77%はこの3年間に海外旅行未経験で、そのうちの56%は海外旅行へ行く意向を示していると指摘。若者の海外旅行で最も不安なことは、テロ発生などの「治安」で、海外旅行経験のある若者の最も必要とする者は「Wi-Fi」と指摘した。
クロス・マーケティンググループで、リサーチ・アンド・ディベロプメントビジネスプロデューサーを務める堀好伸氏は、若者の旅行に対するポテンシャルは高く、過去3年間で海外旅行経験者は23%に対して経験なしは77%で、このうち51%が海外旅行に「行こうと思う・機会があれば行きたい」と答えており、この層の取り込むことが重要と指摘した。
3氏が語るように、若者に海外旅行の意向があるなら、「若者の旅行離れ」は違うということになる。堀氏は「若者の旅行離れ」ではなく、「旅行会社の若者離れ」と指摘した。
若者の海外旅行経験者はFIT化し、こうした「若者の旅行会社離れ」は浸透した感がある。OTAやサプライヤーからの直接購入が常態化した状況では、これらのコア層の若者を旅行会社に引き戻すのは難しい。
若者の7割を占める海外旅行未経験者に対して、旅行会社は魅力ある商品を提供する。「若者の旅行会社離れ」を理由に、旅行会社が若者の取り込みをあきらめてはいけない。
縄手氏は、卒業旅行として成功したJTBガクタビは1−3月期の販売が中心ではあるものの、ここ最近は9月発が増えていることを指摘、オフ期の大量送客モデルは終焉を迎え、若者旅行に新たなビジネスモデルが必要な時期に来ていることを強調した。
JTBは海外旅行未経験者に対して、「安心」と「Wi-Fi」の「添乗員付きだがフリーツアー」を提供する。そして、海外旅行経験のある若者、FIT志向の若者には、今年から発売の「ダイナミックJTB」を提供する。
JTBのダイナミックパッケージが、今後どのような展開をしていくのかは、若者の海外旅行の動向を見る上でも興味深い。OTA、航空会社などのダイナミックパッケージに伍していけるか。「エアホ」の実績もあり、どの動向如何では、他社が追随する可能性もある。
この分科会は、経営フォーラムの一環なので、旅行会社の経営に資することが目的なのだが、やはり気になるのは、冒頭の若者のパスポート取得率の低下だ。この部分を上向かせることが、商品開発の前にやるべきことではないか。これこそが、若者の海外旅行促進で行政ができることだ。
ハワイ州観光局(HTJ)は、18歳から34歳の若者を対象に、パスポート取得キャンペーンを展開する。これからパスポートを取得する人に対して、パスポート取得後に抽選で200名に5000円をキャッシュバックする。10年間の年次パスポートの手数料が1万6000円だから5000円のキャッシュバックで1万1000円になる。
若者の海外旅行促進へ一観光局がキャンペーンを展開することに頭が下がるが、本来、これは行政がやるべきことではないか。若者のパスポート取得手数料を無料化することが難しいなら、下げる取り組みをすべきだ。国際観光旅客税を充当すればいい。2018年度概算要求で、若者のパスポート取得助成を検討してほしい。旅行業界が若者の心をつかむのは、それからだ。(石原)
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ガストロノミーと観光促進
http://jwing.exblog.jp/28165137/
2018-02-26T00:00:00+09:00
2018-02-28T17:26:18+09:00
2018-02-28T17:26:18+09:00
yoshiro.ishihara
航空・旅行
「ガストロノミー」が日本では「食文化」「美食」から「美味しい料理」「食べ歩き」にまで拡大解釈され、言葉が広まるとともに、安易に使われている傾向にある。
「Onsen・ガストロノミーツーリズム推進機構」も設立されて、日本独特の温泉と食文化を合体させたものまで登場した。こうした個性的なマッチングはありだと思うが、「シティ・オブ・ガストロノミー」の選定には、長い年月を経て、その地域で育まれた独自の食文化が絶対条件。大自然に培われた地産地消の料理が美味しい、酒が旨いからといって、「ガストロノミー」を使うのは、「シティ・オブ・ガストロノミー」の称号を得た都市に対して失礼なのかもしれない。
「シティ・オブ・ガストロノミー」の認定第1号は、2005年のポパヤン(コロンビア)。先住民の食文化にアフリカ、スペインが融合し、独自の食文化を築いたことが認定理由とされる。その後、2010年に成都、エステルス(スウェーデン)、2012年に全州(韓国)、2013年にザーレ(レバノン)、2014年に鶴岡、順徳、フロリアノポリス(ブラジル)が認定。
2015年には、ベレン(ブラジル)、ベルゲン(ノルウェー)、ブルゴス、デニア(スペイン)、ガジアンテプ(トルコ)、パルマ(イタリア)、ラシュット(イラン)、プーケット(タイ)、ツーソン(米国)、エンセナーダ(メキシコ)の10都市を一挙に認定した。
2017年には、ブエナベントゥーラ(コロンビア)、エステルスンド(スウェーデン)、ハタイ(トルコ)、パラチー(ブラジル)、コチャバンバ(ボリビア)、サンアントニオ(米国)、アルバ(ルーマニア)、そしてマカオが「シティ・オブ・ガストロノミー」の8都市に選ばれた。
旅行業界では、ツアーの企画、添乗で世界中の都市を訪れている人が多く、この都市の中で、一般に知られていなくても、訪問体験やツアーを造成した旅行会社もあるだろう。
2015年に10都市、2017年に8都市が登録されたことで、「シティ・オブ・ガストロノミー」も26都市に拡大した。マカオとともに、多くの都市がユネスコ食文化都市であることをもっとアピールしてもよいのではないか。これを機会に、食文化を中心にした旅行商品の企画・造成も検討するのもいいだろう。
テレビを見ていても、地上波はライトな切り口で世界の旅を紹介している。ディープな旅の体験も、バラエティを通して親しみやすく制作している。一方で、BS・CSは世界の自然・歴史・伝統・文化を街歩きスタイルで紹介する。それらに不可欠なものは食文化で、その重要性はますます高まっている。
和食がユネスコ無形文化遺産に登録されたことが話題となったが、地方活性化、地方創生のためにも、地方都市の秀でた部分にもっと光を当てるべきではないか。その意味で、マカオのように、「シティ・オブ・ガストロノミー」の認定を観光促進の重要な柱としてプロモーションする取り組みを見習いたい。
ガストロノミーだけではない。ユネスコの創造都市ネットワーク事業は、食文化(ガストロノミー)のほかに伝統工芸・民芸品、、デザイン、映画、文学、音楽、メディア・アートの7分野から加盟都市を認定している。日本の創造都市は、食文化の鶴岡、映画の山形、工芸・民芸の金沢、篠山、デザインの神戸、名古屋、音楽の浜松、メディアアートの札幌の7都市。世界の創造都市とのコラボレーションによる創造都市間の双方向交流促進など、様々な観光施策に利用することが期待される。(石原)
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質の高いアジアの観光
http://jwing.exblog.jp/28165135/
2018-02-19T00:00:00+09:00
2018-02-28T17:25:12+09:00
2018-02-28T17:25:12+09:00
yoshiro.ishihara
航空・旅行
日本の海外旅行の課題として、地方の出国率、パスポート取得率の低さが挙げられる。これを合わせると、「地方の若者」の海外旅行を促進することはダブルで難しい課題となる。
先だって、シンガポール政府観光局が協賛するヨウジヤマモト青山店で開催されるレスリー・キー氏の写真展内覧会に出席した。ヨウジヤマモト(山本耀司)氏と言えば、山本寛斎氏、三宅一生氏、高田賢三氏などと並ぶファッション界の“生けるレジェンド”である。日本国内よりも世界での評価が高いのだろう。
写真家のレスリー・キー氏もヨウジヤマモト氏を大変尊敬しており、そのことを内覧会の挨拶で力説していた。驚いたのは、内覧会に参加した内外の若い人たちで、ヨウジヤマモト氏はもちろん、レスリー・キー氏をリスペクトし、この人達には、日本もアジアも世界がボーダレスになっていることを実感した。
海外を行き来すること自体が自然で、個人で東京、シンガポール、上海、香港、パリ、ニューヨークなどを仕事でも、プライベートでも行っているのだろう。「若者の海外旅行促進」というフレーズ自体がピンと来ないようだった。
来日したシンガポール政観のチャン・チー・ペイ副長官は、日本の若年層、とくに教育旅行誘致の取り組みを強化するとともに、昨年8月に全世界でスタートした「Passion Made Possible」キャンペーンに合わせて、若年層に強い異業種との連携などを通じて、シンガポールの魅力を訴求すると強調する。
今回の写真展協賛もその一環だが、シンガポール観光大使として写真展内覧会に参加した俳優の斎藤工さんも、シンガポールとの懸け橋となるボーダレスな若者の代表ということになろうか。
青山、表参道を活動拠点とする若者が日本の若者の代表なのかは分からないが、おそらく、昔も今も、地方の若者には、流行の発信は東京・青山・表参道であり、アジア、世界の最先端都市と通底しているのだろう。
ならば、今回の写真展に集うような内外の若い人たちに、若者の海外旅行について語らせたらどうか。若者の海外旅行と言うと、若い時の成功体験から大上段に構える人やベンチャー系の人が多く、もっと自然に語る人が必要ではないか。
シンガポール政観のプロモーションは、日本のインバウンド政策と比べても参考になることが多い。チャン副長官は、シンガポールが小さく、観光資源が限られているから、観光政策が重要であることを強調した。資源を「持たざる国」の日本が、敗戦を経て経済成長したように、観光資源をはじめ「持たざる国」のシンガポールは観光をはじめ多様な分野で成長している。持てるものは「人材」なのだろう。日本は観光資源の「持てる国」。もっとアジアのインバウンド施策を研究すべきだ。
観光庁と日本政府観光局(JNTO)は、「Enjoy my Japanグローバルキャンペーン」を展開する。富士山、桜、芸者、神社仏閣の日本の典型的なイメージから、自然や食、現代アートなど7つのテーマを設定して、新キャンペーンを英国、ドイツ、フランス、米国、カナダ、オーストラリアの6カ国を皮切りに世界で展開する。
欧米豪からの旅行者が渡航先に日本を選び、訪日旅行を拡大することは、「質の高い観光立国」をめざす上で必要なことだ。その一方で、アジアからの旅行者はさらに質が高くなる。これから芸術、スポーツなどあらゆる分野で、アジアは拮抗する。アジアの成長、若者の成長は早い。(石原)
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ハワイ・ミクロネシアと共に
http://jwing.exblog.jp/28142278/
2018-02-12T00:00:00+09:00
2018-02-16T21:07:12+09:00
2018-02-16T21:07:12+09:00
yoshiro.ishihara
航空・旅行
かつては200万人を超え、海外リゾートと言えばハワイだった。その後、アジアのリゾートが成長する一方で、需要の低迷が続いていたが、2016年、17年と2年連続してプラスとなり、17年の日本人旅行者数は150万人を超えて157万人を記録した。この数字は2000年の182万人に次ぐもの。
ハワイ州観光局(HTJ)によると、2018年の供給量は200万人を超えており、18年の日本人旅行者数は160万人をめざすという。その先にあるのは200万人。日本人海外旅行者数の目標2000万人の1割200万人がハワイ送客の目標となろう。
ハワイが低迷していた当時を振り返ると、日本の航空会社の経営環境の悪化と重なる。日系航空会社はリゾート路線の収益が悪化し、中には利用率100%でも赤字の路線もあった。例えば、JALはリゾート路線のコストを削減するため、リゾート路線を運航するジャパンエアチャーター(のちにジャルウェイズ)まで設立した。
今にして思えば。、JAL本体の経営改革が必須で、別会社設立は付け焼き刃と言わざるをえないが、こうしなければ、運航が難しいほどの不採算リゾート路線だった。
JALが経営破綻から再建を果たし、ANAも国際線事業を拡大する中で、訪日インバウンド市場の成長がそれに大きく貢献している。一方で、アウトバウンド市場としてのハワイの復活が、国際線レジャー市場の中核として注目されている。
ANAは2019年からホノルル線に超大型のエアバスA380型機を導入し、ハワイ需要の拡大を図る。JALは関西−ホノルル線を来年3月30日まで1日2便に増便する。JALはハワイアン航空(HAL)と提携し、自社の成田−コナ、HALの羽田−コナのコードシェアリングなど、ハワイ島など隣島需要の開拓を図る。エアアジアX、スクートも関西−ホノルル線に就航し、高価格帯から低価格帯まで、ハワイの多様な需要に対応する。
ANAとユナイテッド航空(UAL)の共同事業、JALとHALのコードシェアリングなどの提携効果も大きいが、日本の航空会社がハワイ路線を観光市場の中核に位置づけて、投資することが日本の海外旅行需要を拡大することになる。
その一方で、対照的なのがグアムとサイパンの現状だ。グアムは2013年以降、減少傾向にあり、2017年の日本人旅行者数は1-11月で前年比15.9%減の57万1589人。9月以降は北朝鮮ミサイル問題も影響し、2-3割台で減少した。
サイパンのある北マリアナ諸島への日本人旅行者数も2017年は前年比16.5%減の5万944人で、最盛期は年間50万人近い日本人旅行者を訪れていたが、大幅に減少した。
グアムへの日本人需要の低迷を受けて、DALは1月で成田線を運休した。UALも1月で新千歳線を運休、仙台線を4月1日から運休、関西線、名古屋線を3月27日から現行の1日2便を1日1便に減便する。さらに、成田−グアム線の機材を小型化する。
また、DALはゴールデンウィークが終わる5月6日で、成田−サイパン線、成田−パラオ線を運休する。これにより、DALは日本−ミクロネシア線から撤退する。
グアム、サイパンへの需要低下もさることながら、米国内線が堅調な米系航空会社は、機材を国内線に振り向けることも運休の背景にあるとみられる。
それでもグアムの日本人需要は戻りつつあり、JALは3月25日から成田−グアム線を1日2便に増便する。サイパンへもチャータ便を商品化したい。
グアム、サイパンのミクロネシアは、日本の航空業界、旅行業界、日本人が育んだ海外リゾート市場と言っても過言ではない。ハワイとともに、日本から一番近い海外リゾート、ミクロネシア市場の再建は旅行業界の課題である。(石原)
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海外旅行促進策の予算化を
http://jwing.exblog.jp/28079611/
2018-02-05T00:00:00+09:00
2018-02-06T20:13:40+09:00
2018-02-06T20:13:40+09:00
yoshiro.ishihara
航空・旅行
政治家から「双方向交流」「ツーウェイツーリズム」推進の言葉は出てくるようになったが、「アウトバウンド促進」を語る人は極めて少なく、そうした政治家を業界として、もっと高みに押し上げていくべきだと思う。
米国のインバウンド観光関連業界と政治家の関係を見ると、日本との違いが歴然としている。トランプ政権が誕生して、トランプ大統領がESTA(電子渡航認証システム)の手数料収入の訪米プロモーション割当を見直す動きがあった時、旅行業界は一丸となって反対した。
ちょうど昨年の米国トラベルトレードショー「IPWワシントン」がその時期で、2017年のIPWは、訪米プロモーションが、米国経済にどれだけ貢献しているかをアピールする大会になった。
その時の基調講演はウィルバー・ロス米商務省長官で、トランプ政権の中枢にある人が、基調講演で、訪米プロモーションの成果と米国経済への貢献を強調した。IPWがワシントンで開催されたこともあり、ブランドUSA、USトラベルアソシエーションは、活発なロビー活動を展開したと聞いた。
これを日本に置き換えてみると、例えば、国際旅客観光税により空港・観光インフラの高度化を進めるが、2020年の訪日旅行者4000万人の目処は立ったので、プロモーション施策を見直して、重要なセキュリティ対策を拡充する方向に切り替えるとしたら、観光関係団体は反対するだろうか。
日本でよく使われる「オールジャパン」。観光をオールジャパンで展開すると言われれば、現状では、何も反対できない空気感が漂う。現状はいいかもしれないが、米国のような事態が起きた時、観光団体は一丸となって反対表明するとは思えない。
インバウンドがこうした状況なら、アウトバウンドは尚更かもしれない。観光関連団体が圧倒的なインバウンド促進の中で、アウトバウンドを主体とするのは日本旅行業協会(JATA)、海外ツアーオペレーター協会(OTOA)など数団体だ。
国際観光旅客税の日本人負担に対する受益で、アウトバウンド促進策が講じられたとしても、それによって、利用者目線で日本人、事業者目線で旅行業界が恩恵に預かることは極めて難しいと考える。とくに、事業者は「安心・安全」「人材」とう普遍的な施策とは別に、数字の出る具体的なアウトバウンド促進策を裨益として求めるべきである。
アウトバウンド促進策を具体化するとともに、そのための予算を計上させる。それを求めるのは、アウトバウンド事業団体ではないか。例えば、若者の海外旅行促進は、検討会で促進策が決定したら、そのための予算を毎年度計上し、その施策を実行することが受益となる。
決して抽象的なものに終わらせず、予算化して施策を実行することで、アウトバウンド促進につなげる。
訪日インバウンドが拡大し、インバウンド観光産業が基幹産業へと成長していく中で、アウトバウンド中心の旅行業界の地位は相対的に下がっている。航空業界はインバウンドを引き込むことで経営環境を改善しているが、輸送業などの装置産業と違い、旅行業はインバウンドに苦戦している。日本人のためにアウトバウンドを活性化させる。これが国益でなくして何なのか。もっと声を上げるべきだ。(石原)
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温泉旅館と地方創生
http://jwing.exblog.jp/28058769/
2018-01-29T00:00:00+09:00
2018-01-31T16:22:56+09:00
2018-01-31T16:22:56+09:00
yoshiro.ishihara
航空・旅行
ここ数年、国内地方を旅し、旅館・ホテルに宿泊すると、宿泊施設が変わってきたことを実感する。当然のことながら、訪日外国人旅行者の宿泊が増えて、その受入に対応するとともに、国内旅行者も維持する中で、旅館の経営も変革を迫られているようだ。
観光庁は観光立国推進、地方創生に向けて、旅館・ホテルの経営改善のための人材育成事業を継続して予算化している。また、2018年度予算では、宿泊施設を中心とする地域の活性化促進事業として、泊食分離の推進、コンサルティング、旅館の認知度向上ための情報開示促進事業を新たに実施する。
政府が進める観光立国推進は、訪日外国人旅行者を拡大することで、観光を基幹産業として成長させ、それによって地方創生を果たすことが目的だが、その地方の核となるのが旅館という位置付けだ。
山形のある温泉旅館は、経営者の世代交代を機に、旅館を全面的に改装し、高額の高級旅館に生まれ変わった。それまでは、1泊2食平均1.5〜2万円の多人数宿泊の大型旅館だったが、少人数宿泊の「デザイナーズ旅館」に生まれ変わった。
この旅館の再生には官民のプロフェショナルの人が関わり、今後の旅館経営改革のモデルケースとなるようだ。ただ、ここまで高額になると、ターゲットは国内・海外の富裕層となり、一般の人が宿泊することはなかなか難しい。建て替え前が親しみのあるユニークな旅館で、ファンも多かっただけに、この再生が成功するかどうかは注目される。
今回宿泊した新潟の温泉旅館の女将さんは、「うちは大衆旅館だから」と語っていたが、その対人サービスは、従業員一人ひとりに行き届いていた。
大きな旅館は多様な客層が集まる。高度成長期のような団体慰安旅行は減ったが、コンパニオン付きの宴会も断るわけにはいかない。一方で、家族・カップル・一人旅の個人旅行客が増える。訪日外国人旅行者にも対応しなくてはならない。単価の高い富裕層向けの施設も充実させなくてはならない。
こうした多様なゲストを押し並べて満足させるために、いろいろな工夫が施されていた。食事時間や場所も、客層に応じてセグメントされていた。
そして、この温泉旅館には富裕層向けの別館がある。エントランス、チェックインも別で、専任コンシェルジュもいて、食事、温泉、宿泊に至るまで、徹底的に分離されていた。別館の宿泊客が本館を利用することはあっても、その逆はない。
外資系のホテルでは、マーケットセグメントが徹底化されているが、旅館でも同様な傾向にあると実感した。女将さんは「大衆旅館」というが、本館で量を確保し、別館で質を提供する。本館でも質は十分だが、最高の品質を求める富裕層には別館で応える。別館、別邸を持つ温泉旅館が増えている。
大手旅行会社のようだが、事業規模を維持し、そのスケールメリットを活かすには、量と質の両面を追い求めていくことになるのだろう。だが、全ての大型旅館がそれをできるわけではなくて、前述の山形の旅館のように富裕層に特化したり、秘湯で売ったりするなど、温泉旅館も専門特化していくのかもしれない。
大型温泉旅館は、温泉街の中心的存在。宿泊客は温泉街を観光して消費する。したがって、旅館の存続は街の存続に直結する。今回宿泊した温泉旅館は、旅館と街との送迎を無料で行っていた。旅館業は生産性向上、人材育成、IT戦略などが課題として指摘されているが、観光による地方創生の「核」である。(石原)
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旅行業界の信頼回復
http://jwing.exblog.jp/28032130/
2018-01-22T00:00:00+09:00
2018-01-23T19:04:04+09:00
2018-01-23T19:04:04+09:00
yoshiro.ishihara
航空・旅行
てるみくらぶの代表者は逃げなかったが、多くの一般消費者に大きな物理的、精神的な損害を与えたことでは、同列に言われたも仕方がないかもしれない。
あるテレビタレントが、「てるみくらぶで旅行代金、はれのひで晴れ着のお金を両方取られた人がいるかもしれない」と語っていたが、世間から見ると、共に悪質な業者ということなのだろう。
報道によると、はれのひに関する警察、消費生活センターへの相談は約1700件、被害金額は3億円を超えるという。代表者は雲隠れしたままだ。
てるみくらぶの代表者らは、銀行への融資詐欺容疑で1月に入って再逮捕された。社長の自宅から現金が押収され、破産法違反の疑いも出てきおり、この事件もまだまだ続く。
はれのひの事件では、当事者が雲隠れしたこともあって、着物業界や関連業界、行政、弁護士会、業界メディアなど、多くの団体・個人が救済に名乗りを挙げている。今後、どのような形になるのかは分からないが、被害者支援の輪がさらに拡大していくようだ。
はれのひ事件のように、業界全体で被害にあった一般消費者を救済するようなことは稀だ。はれのひ事件が異例と言える。てるみくらぶの時は、旅行業界で同社の社員や内定した学生への就職支援があった。これも珍しいことだった。
旅行業界には弁済補償制度があり、こうした事案に対して適用する。東京商工リサーチによると、2017年の旅行業の倒産は前年比1件増の28件だが、負債総額は465.0%増の215億7300万円で、てるみくらぶの大型倒産が負債総額を押し上げた。
てるみくらぶの負債額は、過去20年間の旅行業の倒産で、歴代最大の1998年のジェットツアー破産の負債252億3500万円に次ぐ史上2番目の高い水準となった。
てるみくらぶの倒産による社会的影響が大きかったことを鑑みて、弁済保証金の弁済限度額の引き上げなどの「弁済制度のあり方の見直し」と「企業ガバナンスの強化」による再発防止策が来年4月から施行される。
JATA田川会長は年頭の挨拶で、「事後処理より事前防止に重点を置き、業界の信頼回復を図りたい」と述べている。
はれのひ事件を見ると、旅行会社の倒産に対して「弁済限度額を引き上げ、ボンド保証制度の活用、企業ガバナンスの強化」とともに、被害者に対する信頼回復への取組みも必要ではないかと思う。てるみくらぶの影に隠れた形だが、その後にアバンティリゾートクラブが突如事業停止して経営者が雲隠れするなど、はれのひと似た悪質な事件も起きている。
旅行業界の信頼回復で思い出されるのが、1998年のサッカーW杯フランス大会で起きたチケット未入手によるツアー中止事件だ。初めてのW杯本大会進出で日本中が熱に浮かされた状態だった。旅行業界も初めてで、だまされた方だが、一般消費者から見れば、当然、旅行会社を糾弾する。翌年の1999年も課題は、「旅行業界の信頼回復」だったと記憶する。
今年は平昌冬季オリンピック・パラリンピック、サッカーW杯ロシア大会がある。フランスW杯の苦い記憶から旅行業界はスポーツイベントのツアーには万全を期しているが、こうした事案は必ず旅行業界全体の信頼問題に関わってくる。
旅行会社は全国に約1万社。旅行業界の信頼回復に努めながら、旅行会社の経営破綻にどう対応するか。
業界の特殊事情はあるにせよ、「風評被害に弱い」という点では、着物業界も旅行業界も同じだ。業界の川上から川下に至る企業、メディアが業界一丸となって被害者の会を立ち上げて支援に乗り出すことは素直に評価したい。消費者目線に立つことが信頼回復に何より重要だ。(石原)
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2018年は「アウトバウンド躍進」
http://jwing.exblog.jp/28016659/
2018-01-15T00:00:00+09:00
2018-01-19T20:07:47+09:00
2018-01-19T20:07:47+09:00
yoshiro.ishihara
航空・旅行
トラベル懇話会の福田叙久会長は、新春講演会の挨拶で、「2018年をアウトバウンド躍進の年」と位置づけ、海外旅行者数「2018年2000万人」、「2020年2500万人」と高い目標を提案した。今年1年間で200万人を上積みすることは難しいが、そのくらいの目標を持たないと、いつまでも2000万人の“呪縛”から離れられないかもしれない。
JATA田川会長も年頭の会見で、海外旅行者数について「人口の2割、最低でも2400万人に達してしかるべき」と述べており、2500万人も視野に入る数字だ。
JATAアウトバウンド促進協議会では、2020年2000万人の目標に向けて、方面別の数値目標を立てている。2016年比で北中南米28万人増(7%増)、アジア80万人増(13%増)、欧州43万人増(13%増)、オセアニア・大洋州31万人増(52%増)、中近東・アフリカ2万人増(23%増)、東アジア211万人増(31%増)とすることで、合計289万人が増加して2000万人を達成できる。
2020年2000万人を前倒しで達成するために、業界が課題を共有して取り組むことが必要だ。その主体となるのがアウトバウンド促進協で、2年目の今年は正念場となろう。
2018年のスタートは、バブル時代以来の株価を記録するなど、実感は別として、表面上は好景気の様相を呈している。為替も安定し、北朝鮮問題、テロなどの不安要因はあるものの、景気の好調は海外旅行の追い風になる。取らぬ狸の皮算用を敢えて承知で言えば、1900万人の可能性はあるとみる。
この1年のアウトバウンド促進協議会の活動を見ると、各方面の観光局サイドの期待が大きいことをひしひしと感じる。それにJATA、旅行会社側が応えなくてはならない。
例えば、2017年のアウトバウンド促進協の活動の成果として、欧州部会の「ヨーロッパの美しい村30選」、「欧州文化首都」に続く「欧州の美しき街道・絶景」の選定、東アジア部会の「世界遺産級 台湾30選」の決定がある。
2018年はこれらをテーマにした旅行商品が造成され、多くの日本人旅行者が現地を訪問することが期待される。同時に、他の方面でも具体的なテーマをつくり、商品化に着手しなければならない。
また、「明日の日本を支える観光ビジョン」に盛り込まれている若者の海外旅行、教育旅行の促進を具体化することも課題となる。
JATA田川会長は前述の年頭会見で、JATAとMOUを合意している国々について言及し、これらの国々への需要拡大に努めることを強調した。また、2017年は欧州需要の回復と中国への観光需要の上向きが特筆されており、2018年に入っても中国観光需要の伸び率は上がっている。
その上、今年は日仏友好160周年、ロシアにおける日本年、日本・スペイン外交関係樹立150周年、日本・スウェーデン外交関係樹立150周年、日本・メキシコ外交関係樹立130周年、日本・インドネシア外交関係樹立60周年、そして日中平和友好条約締結40周年と二国間の周年事業が目白押しだ。
とくに、日中間の記念すべき年に、中国へのアウトバウンドの底上げを図ることが、アウトバウンド2000万人の鍵を握ることになる。
トラベル懇話会の新春講演会で講演した菅義偉内閣官房長官は、双方向の観光交流について、インバウンド2大市場の中国と韓国へ、同程度の日本人旅行者を送客することの重要性を指摘した。各方面へバランス良く旅行需要の拡大を図ることを基本とし、それに加えて、中国と韓国の需要を押し上げていくことが、「アウトバウンド躍進」の鍵となろう。(石原)
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旅行業界変革の幕開け
http://jwing.exblog.jp/27969094/
2018-01-08T00:00:00+09:00
2018-01-05T16:21:53+09:00
2018-01-05T16:21:53+09:00
yoshiro.ishihara
航空・旅行
2017年は、てるみくらぶの倒産と国際観光旅客税(仮称)の導入に振り回された1年だった。田村明比古観光庁長官は、2017年を漢字一文字で「展」の年と語ったが、観光庁にとっては訪日旅行の拡大、国際観光旅客税の導入で、そういうことなのかもしれないが、旅行業界からすると、てるみくらぶで旅行業界の信頼が揺らぎ、日本人出国者にも国際観光旅客税が課されたことで、「展」のようなポジティブな印象を持った人は少ないのではないか。
さて、2018年だが、日本旅行業協会(JATA)田川博己会長は、年頭の辞で2018年を漢字一文字で「備える」の「備」を挙げた。2018年を「変革の時代の幕開け」の年と位置づけ、19年1月導入の国際観光旅客税、てるみくらぶ事件再発防止策、ランドオペレーター登録制度、通訳案内士制度改定などの導入に対して、旅行業界がしっかりと対応していくことを強調した。
JTBは2018年の旅行動向見通しについて、海外旅行者数は前年比1.7%増の1820万人、訪日外国人旅行者数は12.3%増の3200万人、国内旅行者数は1.8%増の3億1120万人と予測した。海外旅行者数は3年連続のプラス、訪日外国人旅行は前年比で年間350万人増の成長と見た。
旅行者数はともかくとして、今年は今後の10年を占う「旅行業界変革の幕開け」ではないかと考える。4月にスタートするJTBの統合が、旅行業界全体に大きな影響を与えると思うからだ。
JTBの高橋広行社長は、年頭インタビューで、2018年を「JTB、第三の創業の年」と位置付けている。海外旅行・国内旅行のFIT化、ウェブ化への対応として、新たなブランド「ダイナミックJTB」をスタートする。
ここで注目するのは「JTBならでは価値」の追求、商品・サービス提供で、OTA、ダイナミックパッケージ、大手・中小旅行会社は、JTBのこの「仕掛け」に対して、どのように対抗していくのか。
今回のJTB統合で最大のポイントになるのは、「企業文化・風土の変革」ではないか。企業の文化や風土を変えることは並大抵のことではない。組織や体制を変えることはできても、人の心を変えることほど難しいものはない。
企業合併では、それぞれの企業の文化・風土を変革して統合するには20年以上を要すると言われる。民営化でも、役職員の心を民営化しないことには、真の民営化にはならないと述べた経営者もいた。それほど難しいということなのだろう。
ただ、最近頻発する日本を代表する大手企業の不祥事を見ると、伝統的な企業ほど構造改革が急務なのかもしれない。
日本の旅行業界のリーディングカンパニーであり、100年以上の歴史を持つJTBが、企業文化・風土を変え、ビジネスモデルをコミッションからフィーに移行し、ダイバーシティと働き方改革を促進するという。
2017年の年頭の辞で、高橋社長はOTAの台頭で、リアルエージェントの経営環境に危機感を表明していたが、その答えがダイナミックJTBであり、統合・改革と見る。
一方で、HISは2017年に社長が交代し、創業者の澤田秀雄氏が社長に復帰した。陣頭指揮で、HISを改革していくのだろうか。ダイナミックJTBに対して、HISや楽天がどう動くのかも注目される。
旅行もウェブが主流となりつつある。JTBはルックやエースからダイナミックJTBが主力商品になる。大手旅行会社も場貸しサイトを含めてウェブ販売のシェアが大きくなる。最大手がそこに舵を切り、価格、品質はもとより、独自の旅程保証、取消料免除制度などのサービスを提供する。
「第三の創業へ、2018年はリセットし、もう一度JTBをつくり直す」と高橋社長は語る。JTBの変革に注目したい。(石原)
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2017年の旅行業界は「残念無念」
http://jwing.exblog.jp/27907746/
2017-12-25T00:00:00+09:00
2017-12-28T20:00:16+09:00
2017-12-28T20:00:16+09:00
yoshiro.ishihara
航空・旅行
てるみくらぶの倒産は、旅行業界の経営の甘さと自浄作用の無さをさらけ出した。経営者は二度目の倒産であり、これを許す業界の身内に甘い体質を自戒しなくてはならない。これまでも倒産を引き起こしたり、問題を起こした経営者が幾度も「復活」しており、そうしたことに対して行政と世論から厳しく処断されたと認識すべきだ。
てるみくらぶの倒産に対して、石井国土交通大臣は、弁済保証金の弁済限度額の引き上げなど「弁済制度のあり方の見直し」と「企業ガバナンスの強化」による再発防止策をまとめた。それらが来年4月から施行される前に、今度はアバンティリゾートクラブが突如事業停止して経営者が雲隠れするなど悪質な事件が発生して、信頼悪化に拍車を掛けた。
「旅行業界は夢を売る」とよく言われるが、これでは「夢を奪う」ことになる。てるみくらぶは倒産によって、沢山の人の夢を奪ったことを旅行業界全体で自覚と反省をしなくてはならない。
てるみくらぶ経営者らは会社の決算をごまかし、銀行から融資を引き出したとして、詐欺罪に問われた。一般被害者や取引先ではなく、金融機関の告発によって検察が動いたことが事件の大きさを物語る。営業利益ベースどころか、売上総利益(粗利益)の段階で赤字なのに黒字に見せかけて融資を引き出すなど、粉飾決算は極めて悪質だが、金融機関が告発することは珍しく、行政も旅行業界に対して厳しい目を向けていると見るべきだ。
今後、旅行会社が金融機関から融資を受ける場合、厳しくガバナンスを求められる。てるみくらぶの倒産は、とくに中小の旅行会社の資金繰りに影響を及ぼす可能性もあり、決して他人事ではないことを肝に銘じるべきだ。
年の瀬を控えて、急激に動き出したのが「出国税」の導入だった。出国税から観光促進税、そして国際観光旅客税と名称を変え、今も仮称だが、新たな観光財源の導入として、地価税以来、27ぶりに新税の導入が決定した。
自民党税務調査会でいろいろな意見が聞かれたが、決まれば早い。2019年4月の導入を1月7日に前倒しし、一挙に導入が決まったが、「拙速」「もっと議論すべき」と批判されながらも、一挙に導入へと進んだ背景には「官邸主導」があったと言われても仕方がないほどのスピード決定だった。
訪日外国人旅行者を拡大し、観光立国と地方創生を図ることが目的の新税導入に対して、日本人出国者の裨益はどこにあるのか。有識者検討会による中間とりまとめ、与党の2018年度税制大綱を読む限り、結局は、空港CIQ整備の革新による待ち時間短縮などが日本人の受益者負担に対する裨益となっている。
残念だったのは、日本旅行業協会(JATA)が観光新税に対して、出国税(当時)導入を認めた上でのいわば「条件闘争」に入っていたことだ。国内旅行主体の全国旅行業協会(ANTA)は国内航空税、日本旅館協会は宿泊税の導入にそれぞれ強硬に反対した。この結果、出国税に一本化された。航空業界は出国税導入に異を唱えつつも、乗務員の非課税を引き出した。
「最初からストーリーは決まっていた」という声もあるだろうが、結果的に貧乏くじを引いたのは海外旅行業界だったということだ。航空業界もアウトバウンドが課税対象になることは避けたかったはずで、新税導入に当たり、航空業界と共闘し、社会や政界に日本人適用反対を訴えても良かったのはないか。
観光産業は基幹産業、メインストリームの道を歩み始めているにもかかわらず、旅行業界はそこから弾かれようとしている。これは来年の課題でもある。ブランドUSAがトランプ政権の圧力に屈せず、堂々と政治と渡り合っているように、日本の旅行業界、とりわけJATAは圧力団体として、観光議連の設立などを含めて、政治力を高めるべきだ。(石原)
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JTBの覚悟
http://jwing.exblog.jp/27907742/
2017-12-18T00:00:00+09:00
2017-12-28T19:59:03+09:00
2017-12-28T19:59:03+09:00
yoshiro.ishihara
航空・旅行
ほぼ1年を経過して、海外旅行者数は10月までで前年比5%増の1488万人で、このまま行けば2012年以来の1800万人に到達する。2000万人の目標に向けて、2年連続でプラスとなったのは、海外旅行が回復傾向にあるとみていいだろう。
但し、海外旅行は外的要因の影響を受けやすい。10月が0.1%増と微増にとどまったのも、北朝鮮問題による影響がグアム、韓国などの渡航に現れたことも影響している。テロ、北朝鮮、さらには予測できない感染症、自然災害などもある。経済環境もさることながら、そうした逆境にも強くなる業界にならなければならない。
海外旅行需要では、今年大きかったのはヨーロッパの回復だ。大手旅行会社の決算状況を見ても、ヨーロッパ需要の回復が各社の業績を押し上げた。ロング方面のヨーロッパは収益性が圧倒的に高く、旅行業界にとっては重要なデスティネーションであることを再認識させられた。
今回のヨーロッパ需要の回復で、これまでと違う傾向が見られた。日本人の旅行の特殊性として、航空事故、テロ事件、自然災害、感染症などが発生すると、旅行重要の回復までに約1年を要する。ヨーロッパの旅行需要は、パリのテロ事件などの影響を受けて大きく落ち込んだが、昨年秋口から回復し、その後も大きなテロ事件が発生しているが、持続的に回復は進んでいるという。
テロ発生=旅行手控えではなく、テロ事件の発生しても、日本人も冷静に見極めている傾向があるという。例えば、ヨーロッパではないが、エジプトのシナイ半島で11月下旬に200人以上が死亡するという大きなテロ事件が発生し、日本では「エジプトでテロ」と大きく報道されたにも関わらず、その後のエジプト旅行に関してほとんど影響はないという。
日本では、ひとたび大きな事件が発生すると、連日マスコミが煽り立てるように報道し、事態が終息しても、その報道はしないということが多い。旅行需要もマスコミ報道の影響が大きかったが、最近のマスコミ不信もあるかもしれないが、事態を冷静に見極める目を持つことは良いことだ。
しかし、ヨーロッパが回復して、旅行会社の収益性が上がったとしても、旅行業界の構造的課題の解決とはならない。JTBの中間決算を見ても、収益性は上がり、売上総利益は伸びたものの、売上高は微増にとどまった。
JTB高橋社長が年頭で指摘したように、国内旅行、訪日旅行、そして海外旅行の需要がOTAにシフトしている流れは止まっていない。その対策として、JTBは来年から新ブランド「ダイナミックJTB」を海外旅行、国内旅行に投入する。
JTBは今年大きく飛躍したFIT対応商品「エアホ」の強化版とも言うべき「ダイナミックJTB」は、ダイナミックパッケージやOTAに対抗する「切り札」的存在になる予感がする。
とくに、ダイナミックJTBは、「JTBならでは」の数々の衣を纏う。独自の取消料免除、滞在先や空港でのトラブルでの日本語24時間緊急対応、遅延見舞金などを「JTB安心パック」としてルックJTBだけでなく、ダイナミックJTBにも適用する。
これは、ダイナミックパッケージ、OTAだけでなく、既存の旅行会社のパッケージツアーにとっても脅威となろう。
今のところ、JTB統合の最大の象徴がダイナミックJTBの投入という印象を受けるが、来年に向けて様々な仕掛けを用意しているとみられる。2018年はこうした「JTBの覚悟」に対して、OTA、旅行会社がどのように競争していくのか。旅行需要の拡大とともに全面競争の幕開けとなりそうだ。(石原)
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業界挙げてグアム需要回復を
http://jwing.exblog.jp/27907738/
2017-12-11T00:00:00+09:00
2017-12-28T19:57:39+09:00
2017-12-28T19:57:39+09:00
yoshiro.ishihara
航空・旅行
方面別の旅行者数の伸びを見ると、香港15%増、マカオ12%増と、香港・マカオが好調に伸び、東南アジアではタイ6%増、フィリピン11%増、ベトナム8%増と堅調に推移している。加えて、ヨーロッパが回復基調にあり、スペイン、ドイツ、フランスなどテロの影響から脱してきた。供給増が続くハワイは7%増、オーストラリアも6%増とプラスを維持している。
一方で、北朝鮮のミサイル問題の影響を受けたグアムは、9月33%減、10月38%減と一挙に3割以上落ち込み、1-10月は15%減までダウンした。
また、1-3月は前年からの好調を維持して大幅なプラスを続けた韓国は、4月以降マイナスに転化し、9月は5%増と回復したものの、北朝鮮問題が尾を引いているためか、10月は2割以上減少した。
インドネシア・バリ島も8月までは11%増で、とくに7月33%増、8月37%増と3割以上の伸びを示していたが、11月のアグン山の噴火で、一挙に冷え込み、年末年始の予約状況にも大きな影響を与えている。
全体の海外旅行者数が微増になった要因は、日本の主要デスティネーションの1つであるグアムの急減が最大の要因とみられる。こうした政治問題やバリ島のような天変地異は、マーケティングやプロモーション活動ではどうにもならない。こうした外的要因からの早期の需要回復策は、業界全体で克服すべき課題であろう。
グアム政府観光局(GVB)は、日本−グアム間就航50周年を記念した「グアム・メガ・ファムツアー」を開催、全国から旅行会社、メディア、インスタグラマーなど約400名が参加し、セミナーやワークショップ、現地視察など盛大に行われた。その狙いは、北朝鮮問題からのリカバリーにある。
グアムへのメガ・ファムと軌を一にして、日本航空(JAL)は、来年3月25日から10月27日までの夏期スケジュールに期間限定で、成田−グアム線を1日1便増便し、ダブルデイリー化することを決定した。
グアム政観のジョン・ネイサン・デナイト局長兼CEOは、「来島者数に直結する航空座席の供給対策を重要課題として取り組んだ結果」と述べ、増便を決めたJALに対して、感謝の意を表明した。
旅行会社も日本−グアム就航50周年記念ツアーをJTB、HIS、KNT-CT、日本旅行、ジャルパック、東武トップツアー、楽天トラベルが販売するほか、グアム政観が新聞及びオンラインでの広告展開を行っている。
米軍の主要基地があるグアムは、全米でも最も安全なデスティネーションの一つで、それは今も全く変わらない。しかし、あの北朝鮮の声明だけで、教育旅行・団体旅行がキャンセルされ、日本人旅行者が一挙に落ち込むというのは実に理不尽だ。
もし、北朝鮮の声明がグアムではなく、沖縄だったら、訪日外国人旅行が大きな影響を受けたことは想像に難くない。物事を短絡的に捉えずに、もう少し冷静な判断を求めたいところだ。
日本人の場合、感染症、テロ事件、天変地異などからの需要回復に、どうしても時間がかかる。欧米などは3カ月程度で需要が戻るが、日本の場合は回復に1年を要するとよく言われる。
フランス観光開発機構のフレデリック・マゼンク在日代表も最近の日本人旅行需要の回復について、他の諸国と比べると、どうしても時間がかかることを指摘していた。
日本旅行業協会(JATA)はテロ事件でフランスはじめヨーロッパへの日本人旅行需要が低迷した時は、いち早く行動して需要回復に努めた。同様に、グアムへの日本人旅行需要の回復に全力を挙げて取り組むべきだ。(石原)
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若者の海外旅行費用を軽減せよ
http://jwing.exblog.jp/27832772/
2017-12-04T00:00:00+09:00
2017-12-07T13:37:33+09:00
2017-12-07T13:37:33+09:00
yoshiro.ishihara
航空・旅行
海外に行かないよりは行ったほうがいいだろうが、もう声高に言う時代ではないのかもしれない。日本の海外旅行は「成熟期」にある。アジアは今が海外旅行の成長期、これから絶頂期を迎える。これは、日本も歩んだ道だ。
若者は今も昔も変わらない、というわけではない。時代か変われば、大人も若者も変わる。LCCで誰でも海外に行ける。ソウル、上海、台北など、アジア近隣諸国は国内旅行と変わらない。若者に気軽に海外へ行く。SNSにアップすることを求めて出掛けていく。ことさら、若者の海外旅行促進と大上段に構える必要があるだろうか。
以上のような意見もあるだろう。
「明日の日本を支える観光ビジョン」に以下のように書かれている。「若者のアウトバウンド活性化◯若者の旅行費用を軽減するなど、アウトバウンドの活性化に向け、以下の取組を実施。・旅行業団体と連携し、若者割引等のサービスの開発・普及により、若年層の海外旅行を更に促進・関係官庁と旅行業団体による若者のアウトバウンド活性化に向けた議論を開始し、2016年度内をめどに結論を得る」
そのために、有識者と関係省庁による「アウトバウンド活性化に関する検討会」を立ち上げ、JATAアウトバウンド促進協議会と協調して、若者のアウトバウンド活性化に向けた具体的に方策を検討するとした。
2016年度はとうに過ぎた。2017年度も残り4カ月を残すのみ。
国は観光立国の訪日インバウンド施策には当然のことながら熱心だが、アウトバウンドは置き去りで、国のアウトバウンドに対する本気度がよく分かる。
これに関して、観光庁を攻める気は毛頭ない。観光施策がインバウンドであるのは当たり前で、アウトバウンドを「観光ビジョン」で触れていること自体が特段の配慮と思うからだ。日本の旅行業界のことを思ってのことだろうが、やらないことは書かないほうが良いのではないか。
「ツーウェイツーリズム、双方向の観光交流、若者のアウトバウンド活性化」。とても耳障りの良い言葉だが、こうした美辞麗句も実態が伴わなくては意味をなさない。
「若者の旅行費用を軽減する」? LCCで行く若者から出国税1000円を徴収したら、「若者の旅行費用を増大する」ことになるではないか。誰が読んでも、話が逆である。
観光ビジョンに明記されているからには、出国税を負担する日本人の受益は、「若者のアウトバウンド活性化」が当然最有力候補となる。観光庁は予算編成で受益を決める方針を示している。予算が付く「若者のアウトバウンド活性化」には何があるのか。
有識者による「観光財源のあり方検討会」のヒアリングで、旅行業界は「旅券取得費用の低減、日本人海外旅行者の安全確保等」をアウトバウンド振興策として求めた。
これに対して、各委員からは「出入国の円滑化、たびレジの活用」に賛同、「パスポート取得費補助は需要喚起につながらない」という意見が出た。
出国税に対して訪日外国人のみのESTA型の導入を求めた自民党議員は、「パスポート取得費用は、個人財産の形成につながるため困難」と指摘した。パスポート取得費用の軽減はハードルが高い。
ようやく有識者によるアウトバウンド活性化の検討会が立ち上がろうとしている。しかし、観光財源検討会の委員の意見を聞いても、こうした有識者の検討会に過度な期待は持たないほうがいい。冒頭のような意見が出てくる可能性もある。旅行業界とは温度差が違うのだ。「若者の旅行費用を軽減する」で押すべきだ。(石原)
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